[イベントレポ]やまきたで暮らしてみようツアー
365日放し飼いの牧場見学と緑あふれる大パノラマを一望しよう


2018年10月14日(日)9:00〜15:30

主催:やまきたで暮らしてみよう実行委員会
後援:山北町/神奈川県/山北町商工会/山北町観光協会/(公社)神奈川県宅地建物取引業協会小田原支部

 今年で4回目を迎えた山北ツアー。移住者たちは夢や思いを確実に「かたち」にしていました。地域の仲間に支えながら山北に溶け込んでいます。

 ツアーには大学生から70歳のシニアまでさまざまな年代が集結。この日は鉄道記念日。汽笛を鳴らして走るD52(デゴニ)が見られると鉄道マニアの男性陣が多数。一方、母親や恋人同伴の理系女子たちは、酪農をめざしたいというたくましい存在感を見せてくれました。

標高723メートルの大野山を散策

大野山山頂

 関東の富士見100選にも指定されている大野山。雲に覆われながらも山北の町並みが遠くに見える絶景です。小雨も上がり、緑あふれる山頂のパノラマを満喫できました。

移住体験談1 東海林 真純さん

東海林さん
森林セラピーガイド 看護師  
 
 東海林さんは森林浴の癒し効果を心身の健康維持に役立てたいと、看護師の経験も活かしながら活動をしています。

森林セラピーに魅せられた理由

 横浜で看護の仕事をしていた東海林さんは2年前に山北に移り住み、看護師として勤務後、西丹沢ビジターセンターを拠点に森林セラピーの仕事をしています。移住前は時間に追われるゆとりのない生活でした。今は山北時間に助けられ、新たにやりたいことが見えてきたそうです。何を求めるかは人によって異なりますが、山北には助けてくれる人はたくさんいます。やりたいことをさせてくれる環境と語る東海林さんです。

杉やひのきの香り体験

森林セラピー講義
 針葉樹の実や青みかんをつぶして香りを感じる体験をしました。揮発性成分フィトンチッドなどは気分をリフレッシュさせるセラピー効果があるそうです。ほんのひとときでしたが、山頂の静かな空間をみんなで共有できました。

山地酪農「薫る野牧場」を見学

 

童心にかえって牛と遊ぶ

薫る野牧場全景

 牛たちは大野山の南向き斜面の牧草地や林で自由に過ごし、自然に生える草を食べています。来月出産を迎える乳牛は起伏のある牧場を歩き回って足腰が鍛えられ丈夫な子どもを自力で産んでくれるでしょう、と語る島崎さんです。

牧場で遊ぶ

森林を歩く

 牛たちは朝夕の決まった時間に集団で搾乳小屋に向かいます。参加者も搾乳小屋に通じる林の中を移動体験。かなりきつい上り坂です。

移住体験談2 島崎 薫さん

 
薫る野牧場 牧場主 山地酪農家

島崎さん 
 大学を卒業後、岩手県の中洞牧場に勤務。昼夜自然放牧という「山地(やまち)酪農」を経験し、ジャージー牛乳を使った乳製品の加工も習得した島崎さんです。今日は山北駅近くの「さくらカフェ」で薫る野牧場特製のソフトクリームが参加者にサービスされました。

移住して2年で山地酪農をスタート

 山北で牧場を開きたいという島崎さんは地元の人たちの支援を受けながら、今年6月に5頭の乳牛を放牧させました。この地でなかったらここまではできなかった、山北の地域の皆さんの応援のお陰と語る島崎さんです。

山地酪農は山を守る山づくりにつながる

 山の斜面はくずれやすいので牧場に野芝を植えて芝の根で地面を固めていく予定だそうです。山を守るために林業と酪農を組み合わせ、牛の力も借りて山の保全をしていきたい。島崎さんは山北から山地酪農を発信します。

共和のもりセンターで昼食・交流会

 

大鍋できのこうどんを囲む

大鍋のきのこうどん

吉田さん親子
 昼食休憩は廃校になった元共和小学校。現在は地域起こしの拠点としてNPO法人共和のもりが運営しています。食事を共にした吉田さん母娘は、牧場で搾乳の手伝いをしながら藍染めの普及活動もしている移住者です。移住した若者たちは共和地区の戦力だそうです。

島崎さんをサポートしている杉本君雄さん

共和地区の先輩と
 杉本さんを中心にNPOのメンバーは、島崎さんをはじめとする多くの移住者を地域に取り込む活動を継続しています。島崎さんは、牧場開設に向けて応援してくれた共和地区の先輩たちに改めて感謝を述べていました。

交流会……サンライズやまきたコミュニティホール

交流会
 山北駅前に会場を移して移住者を囲んだ交流会です。山北の町長さんも飛び入り参加です。皆さんにはたくさんの山北みやげが用意されていました。

移住体験談3 山崎 勝裕さん

山崎さん
鉄道グッズショップ店主 
 
 電車の音とともに目が覚めることがうれしいと語る山崎さんは、根っからの鉄道ファン。廃車や旧車両の収集家でもあります。

山北に鉄道ショップをオープン

 子どものころから鉄道が大好きだった山崎さんは、大学で農学を学ぶも多様な仕事を経験しました。鉄道博物館で学芸員をやっていた時期もあったそうです。現在は鉄道の町へのあこがれもあり山北に移住し、ついに山北駅前通りに鉄道グッズのショップを開店。自宅兼店舗は駅から40秒の商店街にあります。

鉄道の町 山北を広めていきたい

 今まで続けてきた仕事を来年3月に退職します。そこまでさせる魅力は山北が鉄道の古都だから。本物の電車を後世に残したいという大きな夢があります。山北は日本の鉄道開通の初期の頃に栄え、今も雰囲気が残っている町だそう。山北の人が大好きで、人とのつながりが魅力であると語る山崎さん。今まで蓄積してきたことを活かして山北の活性化を図りたい。古いモノを復活させながら、農業もやってみたいと語る山崎さんです。

移住体験談4 今村 英梨奈さん

今村さん

夫婦で芸術活動 駅前通りの工房でデッサン教室開設

 4児の母として育児に追われながらも未就学児サークルの会長を務めている今村さん。ママたちとの交流が楽しく地域にすっかり溶け込んでいます。

住みやすく子育てしやすい町の制度に満足

 東京都日野市出身。2011年に山北の空き家バンク第1号の借家に住み、その後一戸建てを新築した今村さんは、小学1年生、保育園児、そして2歳と1歳の子育て真っ最中の世代。子育て支援制度が充実していて生活の不便さは特に感じないそうです。

今は子育てを楽しみ、将来は夫婦で芸術活動を再開したい

 大学では彫刻やデッサンを学び、19歳の頃に山北で間伐材をアートにする活動に参加して夫と知り合い、自然の流れでこの地に住むことになったそうです。イベントで多くの仲間と知り合い地域とかかわることで、山北定住に不安はなかったと語る今村さんです。

◇町長の湯川裕司さんと津田委員長が山北をアピール
D52フェス夕市

 「まずは山北のリピーターになり、その延長線上に定住を考えていただきたい。今日のD52フェスティバルと夕市もお楽しみください。お帰りは御殿場線で」と湯川さんからの挨拶がありました。また、実行委員会の津田さんからは、高校3年間を蒸気機関車で通学し卒業した年の5月に電化されたという、鉄道の町ならではのノスタルジックな山北の昔を聞くことができました。

               ◇◇◇
 最後に参加者にツアーの感想を聞いてみました。週末に通う家と畑を探していきたい、山北で見た煙をはいて走るSLは青春の一コマと語る男性、また、鉄道をテーマに山北で貢献したいという定年を迎える男性など。一方、若者たちは山地酪農を学びたいという具体的な目標を語ってくれました。旅の目的はさまざまですが、皆が山北ファンという共通点で交流が深まりました、